3つの歯周病治療について
歯周病について
歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯を支えている周りの組織(歯周組織)に起こるお口の生活習慣病と言えます。歯周組織が、プラーク(歯垢)に含まれている歯周病菌(細菌)に感染することで歯茎(歯肉)が炎症を帯びて赤くなったり、腫れたり、または出血などをして疲弊します。やがて歯槽骨(しそうこつ:顎骨のうちの、歯を支える土台となる骨)が溶けてきて、歯が動くようになり、最終的には抜けてしまいます。
歯周病は、日本人が歯を失う一番の原因であり、初期の段階では自覚症状がほとんど無いので、気づかない人が多いものです。実際、日本人の成人の約8割が歯周病(歯肉炎・歯周炎)に罹患しているという統計もあります。 歯磨きが不十分なことにより、歯と歯肉の間に細菌が棲みついてプラークが溜まると、そこに炎症が起こります。これが歯周病の始まりです。初期段階では、自覚症状はほとんどありません。
プラークが石灰化して硬くなって歯石になると、通常のブラッシングでは取り除けなくなり、歯周病は悪化します。歯と歯肉が付着しているすき間に歯周ポケットが出来て、さらに炎症が歯肉の内部まで進行すると、膿が出たり、歯肉溝が深くなったりしていき、歯根膜(しこんまく:歯と歯槽骨を繋いでいる組織)や歯槽骨が破壊され、歯を固定する力は次第に弱くなって、歯がぐらついてきます。このままの状態を放置すると、ついには歯を失うことになります。
歯周病と全身疾患との関係について
● 血管内に発生するプラーク
動脈硬化はこれまで、不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされていましたが、別の因子として歯周病原因菌などの細菌感染がクローズアップされてきました。
歯周病原因菌などの刺激により、動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)が出来、血液の通り道は細くなります。
プラークが剥がれて血の塊が出来ると、その場で血管が詰まったり血管の細いところで詰まったります。
● 脳梗塞
脳の血管のプラークが詰まったり、頸動脈や心臓から血栓(血の塊)やプラークが飛んで来て脳血管が詰まる病気です。
歯周病の人は、そうでない人の2.8倍も脳梗塞になりやすいと言われています。
血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療が、より重要となります。
● 歯周病は糖尿病の合併症の一つ
歯周病は以前から、糖尿病の合併症の一つと言われてきました。
実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いという疫学調査が複数報告されています。
さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。つまり、歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼし合っていると考えられるようになってきたのです。そのため歯周病治療で糖尿病が改善することも、わかってきています。
● 歯周病の治療による血糖コントロールへの影響
歯周病を合併した糖尿病の患者さんに、抗菌薬を用いた歯周病治療を行ったところ、血糖値のコントロール状態を示すHbA1c値の改善する結果が報告されています。
半年に一度は歯科医を受診し、口腔内のケアを
歯肉の炎症が全身に多くの影響を与えることは昨今の研究で明らかになってきています。歯周病も糖尿病も生活習慣病ですから、互いに深い関係があってもなんら不思議ではありません。
毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し、歯周病を予防することが、ひいては全身の生活習慣病を予防することにつながります。
歯科医は口腔内の変化をみることの出来るプロです。また口腔ケアは本人が自分一人できちんと行うのは難しいと言われています。半年に一度は歯科医を受診し、生活習慣も含め、口腔内のケアを受けるようにしてください。
歯周病のサイン
下記のような症状を覚えたら、早めにご相談ください。
- 朝起きたときなどに、口の中がネバネバする
- 歯磨きをしたときに、歯茎から血が出る
- 歯と歯の間にすき間が出来てきた
- 歯並びが悪くて、歯の掃除がよく出来ない
- 口臭が気になる
- 硬いものを噛むと痛む
- 冷たいものを口に含むとしみる
- 歯茎が腫れたり、膿が出たりする
- 歯茎の色が、赤色や紫色に変化した
- 歯茎がむず痒い
- グラグラ揺れる歯がある
- 歯茎が下がることにより、歯が長くなったように見える
- 就寝中に、よく歯ぎしりをする
歯周病の治療
歯周病の治療は、進行の程度によって方法もそれぞれ変わってきます。
歯周病の治療で必要なことは、定期的に歯科医院でメンテナンスを行うことと、日々の正しい歯磨きです。歯科医院に定期的に通っても、毎日の汚れを落とさなければ意味が無くなってしまいます。
当院で、正しいブラッシング指導をお受けになり、それをぜひ励行していただきたいと思います。
当院の歯周病治療
● スケーリング
スケーリングとは、歯石を除去することです。歯周ポケットの中に隠れている歯石をスケーラーという器具を使って取り除きます。
歯石の中にはたくさんの細菌が棲んでおり、そのままにしておくと、細菌が歯周組織を破壊してしまいます。そのため歯周病の原因であるポケット内の歯石を取り除くことが、歯周病の予防と治療には大切なのです。
● ルートプレーニング
ルートプレーニングとは、目に見えない歯周ポケット深部に入り込んだ歯石をスケーラーで取り除き、さらに歯根を滑らかな面に仕上げる治療です。歯周ポケットが深いと歯肉の下に歯石が付着してしまいます。また、歯根には細菌が出す"毒素"が根面に浸透していきます。そうした歯石や細菌を除去し、根面の汚染物質を取り除くのが、ルートプレーニングです。ルートプレーニングはポケットの奥深くまでスケーラーを挿入するため、通常は局所麻酔をして行います。
● ペリオウェーブ
ペリオウェーブとは、PDT(Photodynamic therapy:光線力学療法)により歯周病の原因となる細菌を殺菌する最先端の技術です。まず、歯周ポケット内に特殊なジェルを注入し、その後レーザー光を照射します。すると化学反応を起こしたジェルから活性酸素が発生し、これが細菌を死滅させます。薬を使わないので副作用が生じにくく、また治療には痛みが伴わないため、麻酔の必要もありません。妊婦さんにも安全に行えます。